目次
概要
本要望書は、 社会福祉法人 全国盲ろう者協会 および iOSの日本語点字問題を改善する全国集会 より、米国に本社を置く Apple および 日本の Apple Japan に対して申し送りした内容です。
本要望書は iOS バージョン: 13.6 で動作検証を行っています。
本要望書の公開について、関係団体より同意が得られましたので、ここに掲載いたします。
動画による要望
日本語要望書
2020年○月○○日
Apple Japan 合同会社
社長 秋間 亮 様
社会福祉法人 全国盲ろう者協会
理事長 真砂 靖
iOSの日本語点字問題を改善する全国集会
代表 九曜 弘次郎
日本語ボイスオーバー環境における日本語点字表示の改善に関する要望書
貴社におかれては、iPhoneをはじめとする各種タブレット端末に、障害に対する様々なアクセシビリティー機能を搭載し、障害者の機器使用に幅広く配慮されていることに深く敬意を表する次第であります。
さて、私どもは、視覚及び聴覚の両方に障害を持つ「盲ろう者」を支援する活動を続けてまいりました。
盲ろうという障害は、視覚及び聴覚の両方に障害を有することから、タブレット端末の「音声読み上げ機能」によるサポートでは不十分であったり、全くそのサポートの恩恵を享受できず、アクセス手段としては「点字表示」のみに頼らざるを得ない者が多数存在しております。
また、その障害特性から、他者とのコミュニケーション、外出等における移動にも制限が多く、タブレット端末のアクセシビリティー機能が充実し、インターネットを介して、コミュニケーションツール、情報入手ツールへのアクセスが、容易になることは、盲ろう者に対して、計り知れない恩恵をもたらすものです。
ただ残念なことに、現状では、貴社のタブレット端末の日本語点字表示には様々な問題があり、点字表示に頼らざるを得ない盲ろう者にとっては、機器活用へのハードルが非常に高いという実態があります。
つきましては、今般、別添に示すとおり「日本語ボイスオーバー環境における日本語点字表示の課題」を取りまとめさせていただきました。貴社におかれては、これを踏まえて、日本語点字表示の改善に前向きに取り組んでいただけますよう、心よりお願い申し上げます。
日本語ボイスオーバー環境における日本語点字表示の課題
iOSの日本語点字問題を改善する全国集会
代表 九曜 弘次郎
私は、目が見えず耳も聞こえない。 画面を見ることも音声を聞くこともできない。そのため、iPhoneに点字ディスプレイを接続して使っている。
また、他の盲ろう者に対して、PCやスマートフォンの使い方のサポートを行っている。
しかし、現在iPhoneの日本語点字への対応が不十分なため、非常に使いづらい状況にある。
iPhoneには目や耳が不自由な人に役立つ機能やアプリケーションが多数存在する。日本在住の多くの盲ろう者がiPhoneを使いたいと願っており、日本語点字の改善を希望している。
そこで、iPhoneの日本語点字対応における課題をまとめたので、下記に報告させていただく。
1. 分かち書きとiOS機器における点字表示
日本語は漢字文化であるが、日本国内で多くの視覚障害者に読まれている点字には漢字がなく、仮名文字で表す。そのため、仮名のみで文章の理解を容易にするために、文節ごとに区切って表記する「分かち書き」と呼ばれる手法が用いられている。
現在、iOSを用いて点字ディスプレイに表示される点字には、この分かち書きがされておらず、すべての文字が続けて表示されている。これは、英文が単語ごとの区切りにスペース無しで書かれているようなものであり、読み手は単語の 区切りを自分で想像しながら読まなければならず、読みにくいだけでなく、文章 の理解が難しくなる。
日本点字の書き方の規則は「日本点字表記法」で定められており、日本で使われている点字表示ソフトウェアはこの表記法に基づいて開発されている。
日本語点字を正確に表示するためには
・ 正確な漢字の読み下し
・ 正確な分かち書き
が必須条件である。
日本語点字表記では、分かち書きの規則に従った日本独自の表記法がある。この独自の表記法については「日本点字表記法」で定められている。
(出典:トップページ | 日本点字委員会(日点委)http://www.braille.jp/)
日本語点字でのベースとなる表記法は、漢字仮名交じり文をすべて「読み仮名」
にすることである。
(例)
「日本の視覚障害者の多くはiPhoneを使用している。」
「ニホンノ シカク ショーガイシャノ オオクワ アイフォーンヲ シヨー シテイル。」
ここで、読み仮名として
・伸ばす場合には、「ウ」ではなく「ー」が使われる。
・単語で空白が挿入される。
iOS機器における点字表示も、上記の条件に従って開発を行っていただくことを希望する。
2. 日本文、英文字、数字の判別
点字は6つの点のみで表すが、6点のみの組み合わせですべての文字を表記す
ることは不可能である。
この問題を解消するため、前置符号を用いて文字の違いを区別する。
例えば
・ 日本語の「あいう」
・ アルファベットの「abc」
・ 数字の「123」
上記はすべて点字では同じ符号で表す。従って、この符号を読むだけでは、 「あいう」と書かれているのか、「abc」と書かれているのか、あるいは「123」 と書かれているのかを区別することができない。そこで、前置符号を用いる。
・ なにも書かれていなければ「あいう」
・ 外国語符号が書かれていれば「abc」
・ 数字符号が書かれていれば「123」
というようにである。
また、数字やアルファベットから日本語に戻る際にも、それを表す符号を前 置する。
日本で開発されている点字表示、及び入力ソフトウェアは、これらの前置符号
を入力することで、仮名モード、英字モード、数字モードを切り替えている。
しかし、現在のiOS機器における点字表示、及び入力機能は、このモード切り替えが不十分である。英数字の後に日本語が書かれている場合、日本語に戻るという符号がないために、英数字と間違って誤読してしまう。
また、点字入力においても、仮名から数字に切り替えることはできるものの、 英字に切り替えることができない。従って、日本語文中に英字を入力しようとしてもそれができない。
前置符号により、入力モードを切り替えられるようにしていただきたい。
3. 日本語仮名漢字変換
1でも述べたが、日本語点字で漢字を表すことができない。従って、点字ディ スプレイ上の点字キーボードから日本語文字入力を行う場合、仮名で入力して、 それを漢字に変換する「仮名漢字変換」という作業が必要である。
現在のiOS機器においても、画面上のソフトウェアキーボードから仮名文字を入力すると、キーボード上部に漢字の候補が表示され、漢字の説明を音声読み上げする機能が搭載されている。
・ 点字ディスプレイ上のキーボードから仮名文字を入力
・ スペースキーを押すことで漢字の候補が順に選択、同時に点字ディスプレイ上に漢字の詳細読みを表示
・ 目的の候補が表示されたらEnterキーを押すことで選択した漢字が入力される
上記のような仕様をお願いしたい。
また、日本語を入力する際の動作が不安定なので、改善をお願いしたい。
4. その他
一部、正しく表示されない文字がある。
文字 表示される点字 正しい表記
1人 17*1ん ひとり
2人 27*1ん ふたり
二日 え*0.8*0 ふつか
また、絵文字が、音声では日本語で読み上げているものの、点字では英語で表
示されるなどの問題点がある。
5. 最後に
英語を用いて日本語点字の問題点を表記することはなかなか困難であり、ど こまでお伝えできたかわからないが、日本語点字に精通した方がチェックを行える体制作りが望ましいと思われる。
また、可能であれば、日本で定評のある日本語点訳エンジンを搭載していただ くことが望ましいと考えている。
日本の点字ユーザー、及び日本語点訳エンジンの開発者との連携を計り、より よい点字機能の実現をお願いする次第である。
以上
iOSの日本語点字問題を改善する全国集会
代表 九曜 弘次郎
副代表 御園 政光
翻訳 野々垣 美名子
英語 要望書
July 11, 2020
To:
Apple, Inc
CEO Tim Cook
Apple Japan, Inc
President Ryo Akima
From:
Social Welfare Corporation “Japan Deafblind Association”
Chairman Yasushi Manago
Japanese group for improving iOS Japanese braille
Chairman Kojiro Kuyo
Request for improvement of Japanese braille representation in Japanese Voice Over circumstances
We appreciate your kind consideration from our heart in a wide range of disorders for using your products, which have various accessibility functions, including iPhone and tablet devices.
We are supporting deaf-blind people, who have disability in both of visual and acoustic perceptions continuously.
Deaf-blind disorder has both visual and auditory disabilities. Therefore, support by the “speech reading function” of the tablet terminal is not sufficient. You will also not be able to enjoy the benefits of that support at all. There are many person who have no choice but to rely only on “Braille display” as a means of access for the deaf-blind.
Because of the properties of disability of them, they have many limitations in communicating with others and going out. Sufficient accessibility in the tablet devices and easy access to communication and information through internet gives immeasurable gift for deaf-blind people.
I’m sorry to say but the tablet devices made by your company have some problems in Japanese braille representation. So deaf-blind people who have to relying on the braille representation have very high hurdle for using device.
Accordingly, we would like to send you “Problems in Japanese braille representations in Japanese Voice Over circumstances”. We would like to ask you for referencing this and for acting on improvement in Japanese braille representations from our heart.
Problems in Japanese braille representations in Japanese Voice Over circumstances
Japanese group for improving iOS Japanese braille
Chairman Kojiro Kuyo
I’m deafblind. I can’t see the screen, and I can’t see the sound.
So, I use the iPhone with the braille display device connected to it.
I support other deafblind people to use computers and smartphones.
However, currently the Japanese iPhone braille scheme is not sufficient and hard to use.
iPhone have many useful functions and applications for blind and deaf people.
Many deafblind people living in Japan wish to use iPhone. They wish improvement in Japanese braille in iPhone.
So I summarize problems in Japanese braille in iPhone. And I report them as follows.
Word separations and braille representations in iOS device
Japanese language is represented by Kanji character(characters which represents meanings). However, braille commonly used by visually-impaired people in Japan does not include the Kanji characters. The common braille is represented by only syllabary symbols.
Therefore, method of “spacing between words”, in which each clause is written with separation, is utilized so that readers can understand sentences written by only syllabary symbols more easily.
Currently, “spacing between words” is not used in braille displayed in the braille display with iOS device. All the characters are continuously displayed.
This is similar to that the English sentences are written without spaces between each word.
(Thisissimilartothattheenglishsentencesarewrittenwithoutspacesbetweeneachword)
Readers have to estimate word separations by themselves. Therefore, readers feel difficulty in reading and understanding sentences.
The rules of the Japanese braille is regulated by “representation rules of Japanese braille”. The braille representation softwares used in Japan are developed based on this representation rules.
For correctly representing Japanese braille, following matters are required.
*Reading Japanese Kanji characters correctly
*Separating words correctly.
In Japanese braille representation, there are unique representation methods according to “spacing between words” rules.
The unique representation methods are regulated in “representation rules of Japanese braille”.
reference: Top page of Japanese braille commission
hyperlink “http://www.braille.jp/”
Representation base of the Japanese braille is to rewrite from the sentences including the Japanese Kanji characters and syllabary symbols into the sentences written by only syllabary symbols.
(Example)
「日本の視覚障害者の多くはiPhoneを使用している。」
「ニホンノ シカク ショーガイシャノ オオクワ アイフォーンヲ シヨー シテイル。」
(meaning “Much Japanese Blind or visually-impaired people is using iPhone”)
(pronunciation “Nihon no shikaku shougaisha no ooku wa iPhone wo shiyou shiteiru”)
Here, for syllabary symbols,
*「ー」prolonged sound symbol is used instead of 「ウ (pronunciation “u”)」vowel.
*spaces are inserted for every word
We request you to develop braille representations in iOS devices according to conditions above.
Distinction between Japanese characters, English alphabetic characters, and numeric characters
Braille is represented only by six dots. To represent all the characters with combinations of only six dots is impossible.
This problem is solved by utilizing propositive symbols for distinguishing kinds of characters.
For example,
Japanese “あいう” (pronunciation is “a i u”)
alphabetic “abc”
numeric “123”
The above characters are represented by the same braille symbols.
Accordingly, by reading only these symbols, the readers cannot distinguish the symbols between “あいう”, “abc”, or “123”.
Here, the propositive symbols are utilized as follows.
“あいう” if there is no propositive symbol.
“abc” if there is foreign language propositive symbol.
“123” if there is numeric propositive symbol.
The propositive symbol is utilized to represent going back to Japanese character from numeric character or alphabetic character.
In the braille representation and input softwares developed in Japan, syllabary symbol mode, alphabetic mode, and numeric mode are switched by input of these propositive symbol.
However, in the braille representation and input function in the current iOS device, the mode switching is not sufficient.
When Japanese character is written after alphabetic or numeric character, because there are no sign representing to go back to Japanese character, the Japanese character is wrongly read as alphabetic or numeric character.
Further, in the braille input, switching from Japanese character to numeric character is possible, but switching from Japanese character to alphabetic character is impossible.
Accordingly, input of alphabetic characters in the Japanese sentences is impossible.
We would like to ask you to enable switching function of input mode with propositive symbols.
Conversion from Japanese character to Chinese character
As I stated in paragraph 1, the Japanese braille cannot represent Chinese character.
Accordingly, for inputting Japanese character with use of braille keyboard on the braille display, operations so called “conversion from Japanese character to Chinese character” are required. In this operation, at first, syllabary symbols are input, and converted into Chinese character.
The current iOS device has a function that, when the syllabary symbols are input with use of the software keyboard on the screen, candidates of the Chinese characters are exhibited at the top of the keyboard, and the explanations of the Chinese characters are read out by voice.
*the Japanese characters can be input with use of the keyboard on the braille display
The candidates of the Chinese characters are sequentially selected when the space key is pushed, at the same time, the detailed explanation of the Chinese characters are exhibited on the braille display.
The selected Japanese Kanji character is input when the target candidate is exhibited and the enter key is pushed.
We would like you to request a scheme as stated above.
And we would like you to ask improvement of stability on operations of the Japanese input, because it is not stable.
Others
Some characters are not correctly exhibited.
Example
・ 1人 2人 (meaning 1 person 2 persons)
・ 一日 二日 (meaning 1 day 2 days)
Further, there is another problem that emoji(graphical characters) is exhibited in English in braille even when the emoji is read out in Japanese in voice.
Conclusion
It is fairly difficult to explain the problems in the Japanese braille in English, and we cannot imagine how far we could explain them. We hope you to establish checking scheme checked by someone who knows Japanese braille well.
Further, if possible, we hope the Japanese braille translation engine, which has established reputation in Japan, will be equipped.
We hope you to cooperate with Japanese braille users and Japanese braille translation engine and we hope realization of improved braille functions.
End
Japanese group for improving iOS Japanese braille
Chairman Kojiro Kuyo
Vice-Chair Masamitsu Misono
Translater Minako Nonogaki