岡山県倉敷市の山崎です。 私は、昨年7月の西日本豪の全盲被災者です。愛用していたマックブックプロは防水 リュックに入っていたものの、ほぼ一日半天井近くまで浸水た自宅から取り出して以 後は使えない状態でしたが、先ごろその道に詳しい知り合いのおかげでほしかった iTunesのデータをとりだすことができました。以下、被災直後からデータ復旧までの 経緯をお話しします。 自宅浸水から一週間後、 「パソコンは中の部品をきれいに洗って乾かせば使える」と被災した自宅の様子を見 に来た知人の情報を信じて、マックの部品洗浄と乾燥を行いました。この作業を請け 負ってくれた夫の話によれば、防水のリュックから取り出したマックは一見きれい だったが、本体のねじを取り外して中を開けると、部品はすでに錆が来ていたとのこ とでした。マックの部品洗浄は、断水して水道が使えず必要な道具立てが何もない 中、水を入れたペットボトルにごく小さな穴をあけたものを用いて行ったそうです。 2018年7月28日 Apple Japanが西日本豪雨被災者向けに製品の無償修理を発表した のを知り、さっそく申し込みましたが、徒労でした。数日後のapple社からの電話で 告げられたのはマックが修理不能だという知らせとアップルリサイクルセンターの電 話番号でした。私はあきらめきれず、返送されてきた被災マックをその後みなし仮設 住宅の押し入れに放置したままにしていました。 事態が急転したのはそれから一年4か月後、つい先週末でした。数年ぶりに我が家を 来訪したK氏に思い切って被災マックのデータ復旧を試みてもらえないかと頼んでみ たのです。 被災マックをK氏に手渡した時に言われたのは、「液晶が白くなってるから、使えん じゃろうなー」、でした。 付属の電源ケーブルは自宅から取り出せなかったので、K氏が預かったのは被災マッ ク本体のみでした。 被災マックになされた処置は、 内部のハードディスクの電源接続部を「接点復活王」という通電復活材で磨いた 後、、それをLinux系OSのUbunt搭載パソコンと接続。被災マックのハードはハード ディスクとしてパソコンに認識されたものの、中身を見ることができず、あれこれコ マンド入力を試した。その結果、データの詳細を確認することができたとのことでし た。 後日、12GBほどのiTunesのデータをUSBに落としてもらいました。 被災マックが動くかどうかも試してもらいましたが、やはりそれは無理でした。 余談ですが マックのほかに、2台のウインドウズ搭載のデスクトップパソコンが水に浸かりまし たが、いずれもデータ復旧はかないませんでした。壁紙の部屋で被災した一台はハー ドディスクを認識させるところまではできましたが、その詳細な中身を読み取ること はできませんでした。土壁の傍で被災したもう一台は泥水とともに土壁の残骸がデス クトップパソコンの内部に入り込み、ハードディスクをとりだすどころではなかった とのことでした。このたいへんな作業を無償で引き受けてくれた専門的な知識を持つ 知り合いがいたことに今は感謝しています。被災後3か月、倉敷市内の修理業者に相 談したところ、データリカバリーを専門の業者に頼めば、成功してもしなくても最低 35万円はかかるといわれました。さらにショックだったのは、パソコンメーカーが被 災したパソコンの無償修理を発表していても、それはただのパフォーマンスにすぎ ず、修理依頼されたパソコンはなにもされないまま「修理不能」のレッテルを付され て返送されるだけ、この発表で得をするのは運送業者だけ、という話でした。 皆さん、愛機はノートパソコンにして、災害時はそれを持って逃げましょう。 もう一つ、余談ですが、被災したUSBは無事でした、泥水で汚れたUSBをきれいな水で 洗って乾かした後、パソコン接続するとデータは問題なく読み取れました。ですが、 災害時はUSBも持って逃げましょう。 自宅が天井近くまで浸水すると、屋内はカオス状態で多少視力のあるロウビジョンの 人でも、単独移動は危険なのです。信頼できる人を見つけて、必要なものをとりだす 作業が困難な場合もありえます。皆さん、これだけは失いたくないと思うものを持っ て逃げましょう。 以上、山崎さんの話、おわり。<<attachment: winmail.dat>>