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263 アンケートお礼状





いつもお世話になっております、東京女子大学現代文化学部コミュニケーション学科4年渡邉佑莉です。
先日は、お忙しい中、iPhoneのタッチパネルに関するアンケートにご協力頂き、まことにありがとうございました。
皆様の貴重なご意見を参考にすることができ、大変感謝しております。
簡易ながら、結果をまとめたものを以下に記しました。
さらに詳しいことが知りたい方は、個別に卒論を添付致しますので、g06c081@xxxxxxxxxxxxxxまでご一報ください。
また、iPhoneの今後の利用についても少しでもお役に立てるよう、アップル社にもフィードバックをする予定でございます。
最後になりましたが、寒さが厳しい折、皆様の健康を祈念致します。


以下、論文要旨です。

問題意識
視覚障害者にとってタッチパネルは、触覚情報に頼ることができないインターフェースである。多くの視覚障害者が、社会に普及しつつあるタッチパネルに不便性を訴えている。
しかし、このように問題視されるタッチパネルだが、iPhone のタッチパネルは視覚障害者に使えると紹介される事がある。
なぜ従来のタッチパネルは使えなくて、iPhoneのタッチパネルは使えるのだろうか。

目的
そこで本論では、iPhone のタッチ操作を例に取り、視覚障害者にも使えるタッチパネ
ルとはどういうものか検証していくことを目的とする。タッチパネルが、視覚障害者
にとって新しいインターフェースの可能性になりうれば、それはとても大きな意義を
持つ。タッチ操作機器の不便性を解消することはもちろん、点字を読めない視覚障害
者にとっても、新しい情報アクセス方法となりうる。視覚障害者のタッチパネル利用に関する問題を解決するためには、タッチパネルの利用拡大を止めるのではなく、使えるタッチパネルを求めることが重要だと思い、検証を行った。

方法
本研究では、2段階にわけて調査を行った。まず、問題のありかの目処をつけるため、iPhone全般について、視覚障害を持つiPhoneユーザーにインタビューを行った。非構造型面接。そして、そのインタビューから、タッチ操作に重要だと思われるポイントを抽出し、さらにそれらについて個々に調査をするため、iPhoneをVoiceOverで使用する方を対象にwebアンケート調査を行った。

結果
まず、インタビュー調査では2つの革命的だという見解を得られた。1点は、iPhoneは直接画面に触れると、その触れた位置を音声でフィードバックすること。もう1点は、特定のアプリケーションでさらにタッチ操作で使いやすい場合があることだ。その他に、選択と実行の操作がシングルタップ・ダブルタップと別の動作になっていること、タッチパネルの面積が手の平サイズでありタッチ位置を把握できること、iPhoneに特化したコンテンツが提供されていること、ホームのアイコン数が適切だということが挙げられた。
次に、アンケート調査を行った結果である。回答者は4名。まず、音声案内とタッチ操作が効果的な理由は、何もない空間を触ってもフィードバックされることと、1度目のタッチで音声確認ができ2度目で確定できるという安心が得られるからだということがわかった。また、大画面タッチパネルの使用について質問したところ、無理と答えた方が1名、工夫次第と答えた方が3名いた。その工夫というのは、迅速なアクセスを可能にするためにアイコン移動はフリックでする、大きな情報から小さな情報へとアクセスするシステムにすることが挙げられた。
また、直接的なタッチ操作ではないが、ホームボタンがあることにより、誤操作をしてもすぐに戻せる安心感があると答えた方が2名いた。
ホームに表示するアイコン数を問う質問は、人によって数がバラバラだったが、共通することはアイコンが指の動かせる範囲内に配置され、かつ情報の配置がイメージできることだった。

考察
iPhone を例にして視覚障害者に使えるタッチパネルを検討したところ、操作の面と情報の面にそれぞれポイントを分けることができる。操作面においては、まず、選択と実行の操作を別にすることがある。その際、音の区別による工夫や、何もない空間も音を付加することも必要となる。また、タッチ位置を把握するためには、手の位置を固定して指を動かせることが重要だ。それがiPhoneでは、片手サイズのパネルとして現れていた。そして、大画面タッチパネルを制作する場合、迅速な情報アクセスのためにはフリックが必要となる。また、直接的なタッチ操作ではないが、iPhoneのホームボタンのように、誤操作をしてもすぐに戻せる機能が安心感を与えている。ここから、タッチパネルには、簡単な操作で確実な結果を出す機能が必要だとわかった。
情報面においては、必要な情報量に絞ることが必要。今回の調査に限ると、適切なアイコン数は、おそらく20数個前後だと推測される。
課題も残った。まず研究面の課題では、抽出したポイントの一般化には至らなかったことがある。今後の研究で、具体化・一般化に期待する。次にiPhoneのタッチパネルの課題としては、入力の不便さの解消がある。現在の案では、外付けキーボードを希望する声が強い。また、使いこなすまでの学習のハードルの高さも問題とされた。
視覚障害者はタッチパネルの利用について不便を感じている。しかし、タッチパネルはこれからも拡大していくと思われる。視覚障害者が使えるタッチパネルの開発は今後益々重要である。



東京女子大学現代文化学部コミュニケーション学科
渡邉佑莉

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